群論の最初の一歩

群論とは?

物理などで群論とか言う数学を耳にすることがあるかと思います。 どんなものなのかよくはわからないけどやってみたい。という人向けの超入門記事です。

群論(Group Theory)というのはその名の通り群(group)を扱う分野です。 じゃあ群ってなんだ? ということですが、群というのは 下の群の公理に従う 何かしらの演算を定義した集合 の事です。

群の公理

集合に成り立つ任意の演算を"・"で書くとすると

  1. 演算に対して演算が閉じている。 (演算を行なった結果もその集合の元である)a,b \in G \Rightarrow a \cdot b \in G

  2. 演算は結合法則が成り立つ (a\cdot b)\cdot c = a\cdot (b\cdot c)

  3. 単位元eが存在する  ea = ae = a ~~(e,a\in G)

  4. 逆元g^{-1}が存在する g^{-1}g = gg^{-1}=e,~~~( g,g^{-1}\in G)

これが群の公理です。 しかしこれだけでは分かりにくいので実際に群になる集合と演算の例をあげて行きます。

例えば

整数と足し算

整数(集合)Zは足し算(演算)+に対して群を成します。 上の群の公理を一つずつ確認する事で「これが群を成すか?」を見極めることができます。

まず1.演算に対して演算が閉じている。の確認 整数は足し算をしてもやっぱり整数です。 1,2 \in Z, 1+2 = 3 \in Z

次に2. 演算は結合法則が成り立つ もちろん足し算は結合法則が成り立ちます。  (4+3)+(-2) = 4+(3+(-2)) = 5

次は3.単位元が存在する。  ea = ae = a,~~(e,a\in G)
このようなeの存在ですが、足し算では0にあたります。 0+4=4+0=4

最後に4.逆元が存在する。 逆元というのはある元と演算をしたら単位元になる元の事です。 足し算では単位元は0ですので、ある整数には足したら0になる整数はあるか? ということになります。もちろんあります。符号が逆の整数です。 4の逆元は(-4)になります。
4+(-4) = 0

並べ替え操作

並べ替えるという操作も群を成すことができます。 簡単に4つの文字(a,b,c,d)の並べ替え操作を集合としておきましょう。 つまりこの集合の元の数は4つの並べ替えのパターンだけあるので 4! = 24個あります。 ある並べ替え操作A,Bを考えると

Aは文字の1番目と3番目を入れ替える並べ替えだとするとAが意味することは
Aを(a,b,c,d)に行うと(c,b,a,d)になる。
ということである。

ここで演算はA\cdot Bとあった時Bの後にAを続けて行う(順番に注意)という演算だと定義します。 なぜこのような順にしたかというとある列b=(a,b,c,d)をAで操作するというのをAbと書くようにするためです。 つまり演算した操作は(A\cdot B)bと書くことでbに(A\cdot B)を行うと読みます。

このような集合と演算が群を成すことを確認します。

1.の演算が閉じていることはすぐに分かります。 なぜなら違った入れ替えを連続して行なっても4!=24個のうちのどれかのパターンになるからです。

2.の結合則も成り立ちます。
一つ例をとって確認を行います。
Aを1番目と4番目の文字の入れ替え。
Bを2番目と3番目の文字の入れ替え。 Cを1番目と3番目、2番目と4番目の入れ替えを同時に行う。
と定義します。 すると結合則
 A\cdot(B\cdot C) = (A\cdot B)\cdot C
が成り立つことを確認することができます。

3.単位元は何もしない操作です。

4.元に戻す操作も必ず存在するので逆元も存在します。

回転操作

何かを回転させる操作も群をなします。 例えばグラフのある点を原点を中心に回転させることを考えてみると群をなすことができます。

4つの群の公理を確認できます。 しかし点の回転を考えるときは回転は連続にできるので90°回転、90.11111°回転など無限個の回転操作が存在するので群をなす回転操作の集合の元の数は無限個になります。

では、今まで群になる集合を考えてきましたが、群にならない例も見ておきます。

群にならないやつ

0,1,2,3,4 という集合 と 足し算

{0,1,2,3,4}という集合を考えてこの集合が足し算において群を成すか?を考えます。

すぐに群をなさないことがわかります。まず、演算が閉じません。 1+2=3は3が集合にあるので演算が閉じていますが、 3+4=7は7が集合にあるので演算が閉じていません。

また逆元も存在していません。

しかしこのような集合でも少し足し算の定義を変えてやれば群を成すようにできます。

演算の定義を変えて群にする

整数の合同式を使って足し算を定義します。 a \equiv b (mod~m) という式をaとbをmを法にして合同と言います。

これの意味するところはaをmで割ったあまりがbということになります。

つまりこれを使って足し算を定義すると(5を法とする) 4+3 = 2 (mod 5) となります。つまりこれを使うと上の集合 {0,1,2,3,4} は群をなすことができます。

5を法とする演算で定義すると2+3では0に戻ります。3+4では2に戻ります。 また2+2のようなものでは普通に4になります。

なので演算が閉じていることが確認できます。

もちろん単位元は0のままです。

逆元も存在します。 2の逆元は3です。4の逆元は1です。

結合則も成り立ちます。

終わり

どうでしたか群論の最初として群論の主人公 群について話してきました。どのようなものが群になるか分かったでしょうか。

具体的に群になるような集合を考えていくこともありますし、 群自体を対象として抽象化したまま議論を進めることもあります。

物理では対称性を議論する時に使います。 純粋に数学としても面白い分野です。別々の問題に見えることも実は群論で扱うと同じ問題だったなど抽象化で共通点を捉えることができます。

まだ学びたてですがもっと群論について勉強したり、物理にも使っていけたらなあと思っている今日この頃です。