垂直抗力は重力の反作用じゃないからね!

この記事は Physics Advent Calendar 2017 の 16日目です。

もともとは 2016/11 に書かれたものでしたが、内容をそのままに記事をほぼ100%リライトして2017のアドベントカレンダーとして投稿します。

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垂直抗力 を重力の反作用である と勘違いする人がいるので、「そうではないよ」という説明を中心に書いていきます(今回の記事は上の画像のような状況を想定しています)。

先に書いておきますが、これは「力のつり合い」と「作用反作用」の2つについて勘違いしていることが原因なので(垂直抗力と重力は「力のつり合いのペア」になる。「作用反作用のペア」ではない)、この2つの区別の仕方についても書いてきます。

垂直抗力は重力の反作用ではない

垂直抗力 と 重力は「作用反作用」のペアではなく、「力のつりあい」のペアです。

作用反作用とは?

作用反作用を習うときに、作用反作用のペアの力は

  1. 同一線上にあり、
  2. 力の大きさが等しく、
  3. 互いに反対向き。

と習うかと思いますが、これだけでは「力のつりあい」と勘違いしてしまいやすいです。

作用反作用のポイント

作用反作用 は「押して」「押し返される」力のペアなので「押す側」と「押される側」の2つの物体に力がかかるペアです。
なので作用反作用は

違う物体に働く力のペア

というところです。

力のつり合い?

では「力のつり合い」はというと

力のつり合いのポイント

力のつり合いは 1つの物体に力がかかっていており、「打ち消し合っている(つりあっている)」力のペアのことを指すので 力のつり合いは 同じ物体に働く力のペアになります。

では、垂直抗力と重力のペアの場合は?

どの物体に力がかかっているかがわかりやすいように「緑の物体」と「青の物体」を少し離してみます。

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図のように垂直抗力と重力を見てみると、どちらも緑の物体にかかっているので、垂直抗力と重力は「力のつり合い」のペアであることがわかります。

では垂直抗力の反作用、つまり「作用反作用」のペアになる力はどこにあるのでしょうか?

垂直抗力の反作用

垂直抗力の反作用は、

緑の物体が青の物体を押す力

です。 図で見て見ましょう。

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緑の物体には重力がかかり、下に引っ張られます。そのため青の物体を、「緑の物体の下の面」で押すことになり「緑の物体が青の物体を押す力」が生まれます。

この力が「重力が原因であり、重力と同じ大きさである」ため、今回話題にしているような勘違いが起きやすくなっています。

つまりよくある勘違いの説明で

垂直抗力は重力の反作用 です。

とありますが、これは正しくは、

垂直抗力は重力(同じ大きさの力で、物体が下の物体を押す力 )の反作用 です。

となります。 この( )の部分が抜けてしまっている人がいるのではないでしょうか? そのため勘違いが起きやすくなっていると考えられます。

垂直抗力の反作用をみたので、次は重力の反作用を見てみましょう。

重力の反作用

じゃあ、重力の反作用はなんなのか?

重力の反作用は重力(万有引力)です。

地上にある物体を考える時に忘れがちですが、重力は地球と物体の間の万有引力であるため、図にして描くと、

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となり、 物体地球に引っ張られているとき
地球物体に引っ張られています。

この2つの力(万有引力)は違う物体に働いているので「作用反作用」のペアになっています。a

まとめ

まず作用反作用の法則の注意点を確認しましょう。

作用と反作用は同じ作用線上で逆向きに働く。

ここまではみなさんも知っていることだと思いますが、さらに注意して欲しいのが、

作用と反作用の作用点それぞれ違う物体にある(同じ物体にはない)。

ということです。

この点から垂直抗力と重力が作用反作用のペアにならないことがわかると思います。

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垂直抗力と重力は同じ物体にかかる力 これは作用反作用の組でなく、力のつり合いのペア ←ここがややこしくなっている人もいるのかもしれません。

垂直抗力も重力も同じ物体の中に作用点があるのでこれらは作用反作用のペアにはなりません。

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物体がテーブルを押す力と垂直抗力の組は 力の作用点が違うので作用反作用になる!(作用点を見やすくするために少し物体を浮かせています。本当はくっついています)

意外と盲点になっていたり、物理を専門にしている大学生でも間違えやすいところなので注意しましょう(実際に間違えてしまっている人を見たことがあるので)。

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